振り返って原点を見つめ直すという作業は、どんなことにおいても大切だと思う。
自分にとってのビールの原点は、よなよなエール。
大学生の頃は、飲み会で銘柄なんて気にもせず「とりあえずビール」でゴクゴク飲んでいた。ビールの会社は、アサヒ、キリン、サッポロ、サントリー、ヱビス……? ヱビスはサッポロが造っているということも知らず、とりあえず喉を潤すためにゴクゴク飲んでいたのだ。
スーパーに行けば、大手ビールの銘柄がずらりと並ぶ。が、味の違いがわからないので選べない(今となっては、自分の勉強不足だったとは思う)。
そこに現れたのが、よなよなエール。
デザインもそうだし、ネーミングもそうだし、違いのわからない自分にも違いのわかる部分がたくさんある。ゴクゴク飲むビールではなく、夜な夜なゆっくりと飲むビールなのだな、なんてことも勝手に思っていた。
初めてよなよなエールを飲んでから10年くらい経ってビールライターとして活動しはじめ、そこからさらに10年経って今がある。その約20年の間、大手以外のビールで最初に飲んだのはよなよなエールだということをずっと覚えていた。
デザイン、ネーミング、飲み方、そしてそれらを含むマーケティング。市場の99%を大手ビールが占める中、小さい会社がそこで手にとってもらえるための戦略が考えられていた。もちろん、どれだけ飲んでも飽きない味も魅力のひとつ。
ビールのことを考えるときには、よなよなエールがいつも自分にとっての原点となる存在。
原点が原点のままでいてくれることで、自分もブレずに進むことができるような気がする。